高級感のある大理石カウンターは、レストランやバーの顔。ただし大理石には意外な弱点があります。それは「酸」です。ワイン、レモンサワー、ドレッシング——お店で毎日扱うものの多くが、実は大理石にとっての天敵です。
ワイン1滴でも「酸焼け」は起きる
大理石の主成分は炭酸カルシウム。ワイン、レモン、炭酸飲料などの酸性の液体が触れると化学反応を起こし、表面のツヤが白く濁ってしまいます。これが「酸焼け(さんやけ)」です。
酸焼けは汚れではなく素材そのものの変質なので、拭いても落ちません。研磨で表面を削り直すしかなく、その間は席の閉鎖が必要になり、費用も高額になりがちです。しかも研磨で直しても、営業を続ければまた同じことが起きます。
例えるなら「チョークにお酢」です
なぜワイン1滴で大理石が曇るのか。理科の実験を思い出してください。チョークにお酢をかけると、シュワシュワ泡が出て溶けていきます。あれとまったく同じことが、カウンターの上で起きています。
大理石とチョークは、じつは同じ炭酸カルシウムという成分の仲間。だから酸に触れると、目に見えないスケールで表面が溶けます。溶けた面はデコボコになり、光をきれいに反射できなくなる——それが「白く曇った」状態の正体です。
つまり酸焼けは、汚れがついたのではなく「石が少しだけ溶けて、なくなった」ということ。なくなったものは、拭いても戻ってきません。ここが、普通のシミとの決定的な違いです。
お店の中の「酸」はこんなにある
| 酸の元 | 起きること | 気づきにくさ |
|---|---|---|
| ワイン・スパークリング | グラスの底やこぼれで輪状の酸焼け | 拭き取っても跡が残っていることに後から気づく |
| レモン・柑橘(サワー、料理の付け合わせ) | 果汁の飛び散りで点状の曇り | 小さいので蓄積してから気づく |
| 炭酸飲料・ハイボール | 結露と一緒に垂れて筋状に | 水滴に見えるので放置されやすい |
| ドレッシング・ソース(酢) | 提供時の垂れで曇り | 厨房側カウンターで多発 |
| 酸性洗剤・除菌剤 | 清掃のたびに全面のツヤが低下 | 「きれいにしているのに曇る」の正体 |
ポイントは、酸焼けの多くが営業中ではなく閉店後の清掃で進むこと。良かれと思って使っている洗剤が原因というケースが本当に多いのです。大理石に使ってはいけない洗剤については大理石に重曹・クエン酸・ハイターはNG?で詳しく解説しています。

酸焼けと水垢・汚れの見分け方
「これって酸焼け?ただの汚れ?」と迷ったら、次の3点をチェックしてみてください。
- 水拭きで消えるか:消えれば汚れ。残れば酸焼けか水垢です
- 触るとザラつくか:ザラつく・盛り上がっているなら水垢(ミネラルの固着)。ツルッとしたまま曇っているなら酸焼けの可能性大
- 光を斜めから当てる:酸焼けは正面からは見えにくく、斜めからの光でマットな曇りとして浮かび上がります
酸焼けだった場合、市販の洗剤やメラミンスポンジでこすっても直りません。むしろ悪化させることが多いので、それ以上手を加えずにご相談いただくのが安全です。
「気をつける」運用には限界がある
コースターを徹底する、こぼれたら即拭く、洗剤は中性のみ——ルールを作ることはできますが、忙しい営業中に全スタッフが完璧に守り続けるのは現実的ではありません。お客様の腕の動きまではコントロールできませんし、「カウンターに気を遣わせる接客」は本末転倒です。
「削る」から「貼って守る」へ
KPFは、施工できる面を薄い透明フィルムで覆い、日常の汚れや擦れへの対策を図る表面保護です。すべての傷・シミ・薬品・水分を防ぐものではなく、端部や継ぎ目からの影響にも注意が必要です。素材、既存の塗装、使用環境を確認して施工範囲とお手入れ方法をご案内します。
- 酸・水分・アルコールを素材に到達させない
- 透明な薄いフィルムでも、光沢・反射・手触りが変わる場合があります。実物サンプルを照明や見る角度を変えて確認してください。
- 日常のお手入れは、施工店が案内する洗剤・道具・拭き取り方法に従ってください。汚れの種類や放置時間によって落としやすさは異なります。強くこすらず、端部の浮きや傷みも確認し、落ちない汚れは施工店へ相談しましょう。
- 傷みが見られる場合は、清掃で対応できるか、補修やフィルムの交換が必要かを施工店が状態を見て判断します。交換すれば必ず下地が新品に戻るわけではなく、剥離時に塗装や既存仕上げへ影響する可能性もあります。
使用できる期間は、素材・施工状態・使用頻度・清掃方法・日射などで異なります。一律の耐用年数や半永久的な保護はお約束していません。 保証・補修の対象、期間、費用は契約内容によって異なります。施工前に書面で確認してください。日常使用の傷・汚れ・破損が無条件に無償交換の対象となるわけではありません。既存のご契約は、お手元の契約書・保証書に従います。 関連記事:大理石のコーティングはどれを選ぶ?。
すでに酸焼けしてしまっている場合
その場合も手はあります。研磨で一度ツヤを取り戻し、その直後にKPFで保護する——「リセット+再発防止」をセットで行う方法です。せっかく研磨費用をかけるなら、また同じダメージを受ける前に守っておくのが合理的です。研磨については大理石の研磨・クリーニングの考え方もご参考に。
よくあるご質問
Q. 熱い食器を置けますか?
A. 温度だけでなく置く時間や形状でも影響が変わります。熱い物は直置きせず、適切な鍋敷き等を使い、家具とフィルムの使用上の注意を守ってください。
Q. カウンターの一部だけ施工できますか?
A. できます。ドリンクを作る側だけ、客席側だけなど、傷みやすい範囲に絞ったご提案も可能です。
Q. 営業を止める必要はありますか?
A. カウンター1台なら閉店後の数時間で施工できるケースがほとんどです。営業スケジュールに合わせて調整します。
実際にあった話:ホテルの床の「ジュース焼け」
こんな事例がありました。あるホテルのレストランで、床にこぼれたオレンジジュースのあとが白く残ってしまい、拭いても磨いても取れない。ずっと悩まれていたそうです。原因はこの記事で説明してきた酸焼けそのもの。ジュースの酸が、石の表面を変質させていたのです。
この事例では下地補修で艶をできる範囲で整え、表面保護を組み合わせました。一般の床への施工可否や酸焼けの完全防止を示すものではありません。現在の施工対象はガイドラインに従い、一般の歩行床全体への施工は行っていません。
ワインバーやビストロなら、こぼれる場所はだいたい決まっています。カウンターの手元、ドリンクを作る側、そしてテーブル席の床。「よくこぼれる場所」から順に守るのが、費用対効果のいちばん高いやり方です。

開店前・改装後なら、さらに話は簡単
開店・改装時は素材の仕様と使用予定の薬剤、現在の状態を確認して表面保護を検討できます。下地確認は必要で、何年も開店日の状態が続く保証ではありません。
まとめ:酸焼けは「起きる前提」で仕組みを作る
酸焼け対策はこぼしたものを早めに取り除く運用と、素材に合う清掃が基本です。フィルムも選択肢ですが、酸が一切触れなくなる、再発しないという保証ではありません。補修が必要な場合は状態から判断します。
お見積もりについて
費用はカウンターの面積・形状・石の状態によって変わります。カウンター全体と天板の写真、おおよそのサイズをお送りいただければ概算からご案内できます。現地確認・お見積もりは無料です。お問い合わせはこちらから。
